『怪我なんかしたら大変でしょ!』



『な、何でだよ、ただ一緒に行きたいって言ってるだけじゃないかっ』



『い〜や、お前は絶対に「自分も!」とか言って訓練に参加しようとするだろ』



『うっ』













「ちぇ、何だよ二人とも」








太陽の光をいっぱいに受け止めながら金色の髪はキラキラと美しく輝いている。
幻想的なその姿にはおよそ似つかわしくない悪態を吐き出しながら、カガリは
ズンズンと足を進めていた。

とくに目的などは無いが、もともとじっとしていられる性格でもない。
大人しく部屋に帰るなんてもってのほかだ。
今帰ったならば侍女であるマーナが恐ろしい形相で自分を待ち受けているだろう。
さて、どうしたものか・・・・・










「カガリ様?」









うんうんと唸っていると後ろから声を掛けられた。
振り返ればそれは自分が良く知る顔。








「あ、エリカ」



「『あ、エリカ』じゃないでしょう。まったく、また抜け出されましたのね。
マーナさんの苦労が目に浮かびますわ」








くすくすと笑うエリカはカガリの知っているそれだ。
だが何故だろう?妙な違和感を感じる。
しかしたいして気にも留めずカガリはエリカに話しかけた。








「ちょうどよかった。なぁ、何か面白いことないか?暇なんだ」



「面白いことですか?」








カガリのその台詞にエリカは軽く考え込む仕草を見せた後口を開いた。








「面白いことではないのですが暇なのでしたら糸紡ぎを手伝ってくださいません?」



「糸紡ぎ?」



「はい、あぁ、でも殿方のように育てられたお転婆姫様じゃ無理かしら」








からかうようなエリカの言葉にカチンと来て、「それぐらいできるっ」と、ムキになって返す。
その一瞬、エリカの口がニヤリと歪められたことを意気揚々と仕事場に足を向け彼女に背を向けた
カガリは気づくことはなかった。













どうして気づかなかったのだろうか、エリカならば部屋に戻らない自分をうまく誘導
して部屋に戻すのに。



どうして気づかなかったのだろうか、エリカは仕事を自分に手伝わせるなんてことを
しはしないのに。





どうして忘れいたのだろうか、エリカは異国へ行った夫を迎えるためにしばらく城を
留守にしていることを