「僕、大きくなったらカガリお姉ちゃんを嫁さんにするんだ!」



キラキラと瞳を輝かせる少年に、アスランはひくりと口の端を引きつらせた。















 

何よりも誰よりも
















「あ、カガリお姉ちゃんだ!」

「カガリだっ」

「カガリお姉ちゃーん!!」






湧き上がる子供たちの声。
次々に駆けてくる子供たちに、カガリは嬉しそうに微笑んだ。
あっという間に囲まれたカガリのほうにアスランは足を進めながら自分も微笑を
こぼした。







「カガリは人気者だな」



「嬉しいけどこれじゃ身動きが取れない」







そう口にしながらも、やはり嬉しくてたまらないようで口元が緩んでいる。
そして子供たちと喋りながら、あれ?と首をかしげた。
彼女が疑問に想ってたことは自分も気づいていた。
気づいてはいたが、あえて口にはしなかった。


きっとそれは自分にとって面白くない展開になるだろうから。







「なぁ、ユウタはどうしたんだ?」
















































「ユウタ!」

「カ、カガリお姉ちゃん!?」






淡いブルーの瞳をまんまるに見開きながら、少年は手にしていたものをゴトリと
落とす。
そんな少年のもとに進みよってカガリは彼の髪をわしゃわしゃと撫ぜた。








「なんで一人でゲームなんかしてるんだ?最近元気ないってみんな心配してたぞ?」







ゆっくりと目線を合わせるように腰を屈めながら微笑む。
そんな彼女にわずかながら頬を染めて、彼はもじもじと自分の指をいじっていた。




・・・          面白くない。







「ユウタはカガリさんに会えなくて寂しかったんですわ」



「そうそう、カガリお姉ちゃんはいつくるの?って毎日聞いてくるんだもん」








いままでどこかに出かけていたのだろうか、手に荷物を持ちながら扉を開けて
顔なじみの二人が入ってくる。
その言葉にユウタはますます顔を赤らめた。






             面白く、ない。







「そうか。ごめんな、最近忙しくて・・・。今日はいっぱい遊ぼう!」

「本当!?」

「あぁ!!」








目を輝かして笑う。
そして体中で嬉しさを表現するようにユウタはぎゅ〜っとカガリに抱きついた。
カガリもいつものごとくぎゅ〜っと抱きしめ返す。

とてもほほえましい光景だ。
キラ達もにこやかにその様子を見守っている。










けれどアスランの目にはカガリの腕の中で無邪気に笑うユウタは黒い尻尾の生えた
小さな子悪魔にしか見えなかった。
















「カガリお姉ちゃん、こっち!」


「はいはい」






ここからユウタのカガリ独占の始まりだ。
他の子供たちも巻き込んでじゃれあっているが、ユウタはひと時もカガリの傍から
離れない。
ここに訪れたときは大抵そうだ。

そんな様子を眺めながら、ラクスがゆったりと口を開く。







「ユウタは本当にカガリさんのことがお好きですのね」





その言葉にぴくりと反応する。
その声はカガリたちにも聞こえていたようで、きょとんとした眼差しがこちらを
向いている。
カガリに構ってもらえてご機嫌なのか先ほどのような恥じらいをチリにも見せず
少年は満面の笑みで答えた。






「うん!大好きっ」






その答えにカガリも嬉しそうに「わたしも好きだぞ」と笑っている。
ユウタはキラキラと目を輝かせて言葉を続けた。







「大きくなったらカガリお姉ちゃんをお嫁さんにするんだ!」






その言葉にラクスは「まぁ」と笑い、キラは「十年後が楽しみだね」と笑っている。
カガリも一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐに笑顔に戻る。







「ははは、ありが・・・」




「ダメ」











優しく心地よいカガリの声は最後まで紡がれなかった。








           分かっている。
その言葉は”大きくなったらお母さんと結婚する”と幼子が母親に言う言葉と同意義だ。

分かっている、けど。

気がつけばイスから腰を浮かし、しっかりと腕の中に愛しい彼女を捕らえる自分がいた。

















「カガリは俺のだから、ダメだ」
















































「おまっ、なんだよ昼間は!大人気ないぞっ」


「・・・・・」






二人がいるのは星が良く見える窓辺。
子供たちはとうに夢の中だ。

カガリは顔を赤らめ怒ったような呆れたような器用な顔をしてアスランにぶつぶつ
と文句をもらす。
その顔はわずかに赤い。

たいしてアスランは拗ねたようにそっぽを向きながら口を尖らせている。
普段のアスランを知っている者なら目を丸くして困惑するだろうその顔。

ラクスはクスクスと笑いながら二人の下へ歩み寄った。







「良いではありませんかカガリさん、そんなアスランも可愛らしいではありませんか」


「かわっ!?」







咽るように反応するアスランを気に留めず彼女は手に持ったお酒を掲げた。








「それより一杯いかがですか」



「え?いや、わたしは未成年だし・・・」








困ったように返答するカガリにラクスはふんわりと笑いかける。








「一杯だけですわ、せっかく珍しいお酒が入ったんですもの」







そう言って杯に慣れた手つきでお酒を注いだ。
そしてそれをカガリのほうへ差し出す。
カガリは少し考えて、それを受け取った。








「珍しいって?」


「えぇ、なんでも満月の夜に月が頂上に上がったころ、このお酒に月を落として
飲むと願い事が叶うそうですわ」






酒に月を落とすとはまた抽象的な話だ。

神秘的でしょう?

そういって微笑みながら、残りのお酒ともう一つの杯を残してラクスは奥の方へ
戻っていった。








「そういえば今日は満月だ」


ラクスが去った後、ふと空を見上げてカガリが言う。
何か楽しそうに笑いながら、カガリは「お前も飲むだろ?」と杯を差し出してきた。
ありがたく受け取る。
そしてゆっくりと瓶を傾けて透明な液体を流し込んだ。

注ぎ終わったあと、自分の杯を弄ぶように眺めながら、カガリはポツリと呟いた。




「願い事が叶う・・・・かぁ・・・・」







口をつけず杯を眺め続ける彼女にアスランは口を開いた。







「カガリの願い事はなに?」







なんとなく答えが分かっていながら尋ねる。
彼女は少し思案したあと、答えた。







「世界・・・・いや、まずはオーブの民が幸せに暮らせるように・・・かな?
そのためには私が頑張んなきゃだけど」






口にして、自愛に満ちた顔で微笑む。
その笑顔の美しさに見ほれると同時に、切なく胸が締め付けられる。

彼女の胸の中はこの国のことが一番なのだろう。
こんなに彼女に思われている国民は本当に幸せものだ。
わずかばかり、いや、どうしようもなく彼女の心を独占するオーブという国に
妬ましささえ覚えてしまう。

けれどそんなことは間違いだと分かっているから。だから         ・・・














『大人気ないぞっ』








「・・      大人気なくたっていいさ」


ぼそり、と。







空気に溶けてしまうような微かな声で呟いた。
彼女はそれを僅かに拾ったようで、こちらに目を合わせてきた。








「何か言ったか?」


「いや?」


「そっか。で、お前は何を願うんだ?」








さほど深く追求してくることは無く、次の話題に興味津々と言った瞳で見つめ
てくる彼女に苦笑を漏らす。
自分にできるようなことなら叶えてやると言わんばかりだ。

もしもそれを口にしたなら、彼女は自分の願いを叶えてくれるだろうか・・・
















            大人気なくたっていい。


            好きな人に自分だけ見ていて欲しいと思うのは当たり前だろう?















スッと杯を置き、後ろから彼女を抱きしめる。
優しく、優しく、包み込むように。
そして甘えるように。

















「これ以上嫉妬の対象を増やさないで・・・」





             俺だけを、見て。

















end...








                                     5555Hitを踏んでくださったあど様に捧げます。                                    リクエストは「嫉妬するアスラン」とのことでしたが                                          キチンと消化できているでしょうか(汗)                               アスランの嫉妬話、読むのは好きなのですが書くとなると意外に                                      難しいですね。書かれる方々に改めて尊敬の念を。                              そして何故だか最後のほうはやたらとシリアスチックに・・・(汗)                               嫉妬の対象はキラやラクス、ユウナやシンなども考えたのですが                                      最終的にやっぱりカガリといえばオーブかなっと。                                   直接的な対象はマルキオ導師邸の子供ですけど。(苦笑)                                    やたらと長い駄目文になってしまい申し訳ありません。                                             リクエストありがとうございました!                                                       2005.11.26