「今日から身の回りのお世話をさせて頂きます、アスラン・ザラです」






すごく感じのいい青年だった。
とても大人っぽくて、穏やかで優しい          ・・・





なのに目の前にいるこの男はいったい誰なのだろうか。





















騙された!!























鳥がさえずり、爽やかな風に木の葉が踊る。
朝日が昇り気持ちの良い朝。






「カガリ様、起床のお時間です」


「ん〜、もう少し」







金色にちらばる髪が布団の中に隠れる。








「カガリ様」


「もう少しだけぇ・・・・」


「・・・・」








布団を少しはぎ、少年は少女の耳元に口を寄せ呟いた。
とろけるように甘い声で。









「カガリ、起きないと襲っちゃうよ?」
























ガバリッ

















「な、ななななななっ!?」


「おはようございます、カガリ様」


「え?、あ、オハヨウ・・・?」







穏やかに朝の挨拶を交わしてくる。
とんでもないことを耳元で囁かれたような気がしてカガリは顔を赤らめしばし
固まっていたのだが、目の前の青年はあまりに何事も無かったように爽やかな
笑みを向けてくる。

そんな彼の様子にさっきのは自分の聞き間違いだったのだろうかと思う。








「朝食の準備が整っております、ウズミ様、キラ様がお待ちですよ」



「えぇ?」








ちらっと己の部屋に掛けてある時計に目を向ける。
まだ食事の時間には・・・というより普段自分が目覚める時間よりもずいぶん
と早い。







「なんだよ、いつもよりも早くないか?」







彼に文句を言ったところでどうにもならないことは分かっているがついつい愚痴
をもらしてしまう。
そんな私に対して彼は大人びた笑顔を見せながら答えた。







「今日は昼からセイラン家の方々と会合がございますのでそのためですよ」







その言葉に思わず顔をしかめてしまうのは致し方ないだろう。
以前から自分はあの家系のものたちは苦手なのだ。
そしてその席のために自分の貴重な睡眠時間を削られるかと思うと気に入らない。
サボってしまおうか。

自分の思い浮かべた願望に早々と頷く。

そうだ、それが良い。








「あ〜・・・今日はあまり体調が良くないからこのまま寝ていると父様とキラ
に伝えてくれないか」








できる限りあまり元気の無い風を装って言う。
寝起きのだるさが上手く体調の悪さを演出してくれていた。
それを聞いてアスランはじっとこちらを見つめてくる。

うぅ、なんだよ。

嘘をついている罪悪感から、カガリはわずかに顔を背けた。







「・・・・そうですか」







了承してくれたかのような声にホッとして「じゃあよろしく」と彼の方を見ようとした。

が、その瞬間、強い力に体が傾き、気がつけば天井を目にしていた。
いや、正確には天井と翡翠の目を細めて口元を歪ませている彼の顔を。







「嘘はよくないな?カガリ」


「へ?」







何が起こっているのかわからなかった。

混乱している頭の中で必死に今の状況をつかもうとする。

自分を見下ろす彼。
彼に見下ろされている自分。






「おまっ何を!!」


「体調悪いなんて嘘ついて、会合サボって寝るつもりなんだろう?」






うぐっ・・・と分かりやすいほど分かりやすい反応を見せるカガリに口の端を
より高く持ち上げて彼はにやりと笑った。






「だ、だからってこれは何だっ」






必死に押し返そうと胸を押すカガリにアスランは妖艶に笑う。






「言ったろ?起きないなら襲うって」



『カガリ、起きないと襲っちゃうよ?』






カッ顔を赤くする。
聞き間違えではなかったのだ。
信じられないような面持ちのカガリにアスランは唇を寄せる。
カガリは目を見開き力いっぱい彼の胸板を押した。

火事場の馬鹿力とでもいうのか、唇が触れるか否か、寸前、いや、一瞬触れて
しまったかもしれないが、アスランの体が押し返された。

その瞬間にカガリはすばやくベッドから抜け出す。
そしてアスランのほうをキッと睨みながら告げた。







「着替えるっ!出てけ!!」







そんな彼女をパチクリとめを瞬かせながら、再び口元を歪ませて言った。








「着替え、手伝おうか?」







そのありがた過ぎる申し出に、力の限り枕を投げつけることで答える。
それをさらりと避けくつくつと笑い声をもらしながらアスランは部屋を後にした。

























「お父様!!」






バタバタと騒がしく登場したカガリにキラはほんの少し驚いたような顔をした。
ウズミはゆっくりカガリのほうへ顔を向けカガリに尋ねる。
少し咎めるような声音をさせて。







「朝から騒々しい。いったいどうしたのだ」



「わたしの付き人からあいつを外して下さい!!」







そう叫びながら勢いよく後ろに控えているアスランを指差す。
昨日は酷く気に入っていたような素振りを見せていた娘のいきなりの発言に
ウズミは眉をしかめた。

あまりよい色を見せない父にカガリは小さな苛立ちをもって口を開いた。







「あいつは朝わたしの部屋に入り込んで・・・・っ・・・」







カガリはそこで言ったん言葉を止めた。
どう説明するのだ?
先ほどのことを此処で話すのか?
押し倒されて、キスを・・・っ・・・


見る見るうちにカガリの顔が赤くなっていく。


そしてその口は続きの言葉を紡ぐことができずにパクパクと開閉を繰り返すだけだ。









「カガリ様を起こしに行ったところ、なかなか起きていただけなかったので
 部屋の方へ入らせていただいたのです。

 そのことでお怒なのではないかと。

 女性であるカガリ様の部屋へいかなる理由があろうと本人の許可無く立ち入る
 など、本当に申し訳ありませんでした」








何もいえない私の変わりにアスランが口を開いた。

アスランは眉を下げ、本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
その姿は完璧な紳士そのものだ。

そんなアスランの様子を見ながら、ウズミは穏やかに笑った。








「そんなことか、かまわぬよ。
 この馬鹿娘は寝起きが悪くてな、起こしに部屋に入るのに許可などいらぬ」



「なっ、お父様!?」









父の台詞にカガリは反論の声を上げようとしたが、取り合ってはくれない様子だった。
彼がしたことはそんなものではないのに。
だがそれをどう言えばよいのか、カガリは術を知らない。


どうすればいいのかと考えあぐねていると彼と目が合った。
こちらの視線を捕らえると、彼はニヤリと笑った。今朝のように。

父はそれに気づかず早く席に着くよう促した。









「それにしても優秀だよね、今日セイラン家との会合があるからカガリは起きて
 こないかと思ったのに」








今まで父と自分のやり取りを傍観しながら黙々と食事を続けていたキラが口を
開いた。
その言葉に父も頷く。








「うむ、アスラン君にカガリを任せて正解だったな」


「これからもよろしくね」






「はい、       よろこんで」








にこやかに会話を交わす父と兄、そしてアスランを眺めながら、カガリは心の
内で叫んだ。




皆騙されているんだ!!          と。






















end...








                                                                          唐突に書きたくなったパロディー&攻めアスラン。                             唐突に書きたくなった割に長ったらしくなってしまいました。(苦笑)                                            続きそうですが、続きはありません。                                      いえ、本当に考えなしで書いたものですから!!                                                                                     2005.12.11